「2030年の世界地図帳」のまとめ【④貧困について】

【本の要約】
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はじめに

本の要約をしていますが、「2030年の世界地図帳」を読みながら、内容が難しくて理解するのが一苦労でした。
なので、「2030年の世界地図帳」を理解しやすいように、お役に立てればと思い、気になったことを書いてみます。

【2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望】
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それでは、今回はP150の「貧困」をまとめていきたいと思います。

貧困について

そもそも「貧困」とは何か?

貧困はSGDsの目標の1番目にあり、内容は「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」とされています。

貧困は単純にお金のない状態とは言い切れません。
お金がなくても食べ物があり、豊かな生活環境が整っている人もいれば、逆に、インフレが進んでいていくばくかのお金があっても物が購入できない人もいます。

現在では、「多次元貧困指数」という教育、健康、住環境などの貧困も考えられています。
貧困の目安として、SDGsでは「1日1.25ドル(日本円で約130円)」、世界銀行では「1日1.9ドル未満(日本円で約200円)」が「国際貧困ライン」と定められています。
この金額を下回ると、「最低限の栄養、衣類、住まいのニーズが満たされなくなる」状態を意味します。

「未来の可能性がない」ことも、貧困のひとつである

貧困についての認識は、職業や世代間によって大きくばらつきがあります。

1998年、アマルティア・セン氏が提唱した「ケイパビリティ(潜在性)・アプローチ」を提唱しました。

「ケイパビリティ(潜在性)・アプローチ」は、単に金銭を多く持たない(現在の収入が少なくても、昇給や転職で収入が上がる可能性がある)ということを貧困とするのではなく、未来に開かれた可能性を持たないこと(改善の見込みのない閉ざされた環境で生活を強いられている場合)を貧困としています。

貧困の集積地・アフリカ

「1日1.9ドル未満」で暮らす人々は、全世界で約7億3600万人いて、そのうちの半数以上がアフリカ諸国に暮らしています。
なぜ、アフリカはこれほど困難を極めているのでしょうか。

要因①:西欧諸国に振り回された歴史
10世紀を過ぎる頃、アフリカは他国と対等な立場で貿易を行う国もあったと言われています。
14世紀には、金の取引などを行う国もありました。

しかし、16世紀以降(大航海時代以降)の奴隷貿易や、19世紀(産業革命期)以降は、資源の獲得や市場の拡大を目指す植民地支配が行われ、西欧列強に搾取される時代が続きました。

1955年頃から、アフリカ各地で独立運動が活発になり、1960年に17の国が独立を果たしました。
その後、東西冷戦の激化に伴い、アメリカとソ連が積極的に援助を行い、アフリカで両陣営の支援を受けた勢力による内戦が各地で勃発しました。
1989年以降、冷戦が収束し、代理戦争は減りましたが、依然として民族紛争が続いている地域もあります。

アメリカの貧困には、紛争などの人為的な理由が背景にあることも少なくないです。

要因②:開発を阻む「資源の呪い」
天然資源の豊かさそれ自体が、貧困の原因でもあります。

アフリカは豊富な資源を持っていたため、国内インフラの開発努力や教育の拡充などをせずに、莫大な富を得られました。
また、豊富な資源を産業の中心にすることで、二次産業・三次産業を育成する必要がありませんでした。

その結果、国内産業が未発達で、市場が空洞化して富の再分配が行われず、貧富の差は極端に拡大しました。

要因③:近代的な制度が定着しにくい
アフリカは、植民地から近代化を経由せず、現代に至ったため、民主化の過程を経験しませんでした。
※先進国は、封建制や絶対王政から脱して、国民主権などを定着させるために試行錯誤が行われていました。

民主化を経験しなかったため、国民は国政に対して影響力を持つことができず、軍事政権による前近代的な独裁を許してしまうケースもありました。

また、アフリカの豊富な資源を、海外企業に許可を与えることで巨額な収入を得られるため、国民の税収に頼る必要はなくなります。
そのため、近代政治の礎である国家と国民の関係、社会契約が成立しませんでした。

そして、アフリカの国境はヨーロッパ列強に決められたため、国と民族が一致せず、同じ民族が複数の国にまたがっていたり、対立する民族がひとつの国に共存していたりします。
そのため、国家への帰属意識が低く、常に民族紛争が絶えなくなって、貧困につながっています。

SNSでアフリカに民主主義は根付くか

3つの要因から貧困を極めていたアフリカですが、状況は変化しています。

1996年、IMFと世界銀行が、最貧国の状況を改善するために、「重債務貧困国イニシアチブ」で世界の35の貧困国(うちアフリカは29か国)に対して、事実上返済不可能な額の債務を帳消しにしました。

携帯電話の普及率は、2003年に10%未満、2009年に50%、2014年には80%を超えるようになりました。
2021年、3G/4G回線がアフリカの8割の地域で利用できるようになります。
携帯電話普及で、インターネットが発達し、人権と自由の概念を知り、SNSにて独裁政権に反旗を翻しました。

特徴的な歴史的事件として、2010年のジャスミン革命とアラブの春があります。
警官に暴行された青年が抗議の投身自殺をし、それがエジプト・リビア・モロッコ・モーリタニアで民主化運動につながりました。

しかし、これらの事件は、新たな独裁者の台頭やイスラム教原理主義勢力の拡大による政治的混乱を招いてしまいました。
そのため、ほとんどの地域で安定化の見通しが立っていない現状です。

インターネットの普及により、民主化運動が活発になり、独裁者の排除に成功することもありますが、それで民主主義が成立するわけではありません。
民主主義をなすには、主教的対立や民族的紛争が絶えないため、高度な理念の共有や成熟した議会運営、寛容な民意の発露が不可欠になります。
アフリカが民主主義をなすためには、欧米型の自由民主主義か、中国型の国家社会主義か、あるいは別の第三の道か、どのミニを選ぶにしろ、近代なきアフリカ諸国の政治的安定には時間がかかりそうです。

アフリカを変えるテクノロジー

「近代」を通過していないアフリカのネガティブな面を伝えましたが、「近代」を通過していないからこその独創的なイノベーションの萌芽もたくさんあります。

代表例が、電子マネーのMペサです。
先進国でもなかなか普及が進まない電子マネーですが、
アフリカでは身近に銀行がなく口座の保有率も低いため、金融システムを通さずに遠隔地に送金するサービスのニーズがありました。
さらに、もともと物々交換が盛んな土地柄のため、利用者同士でやり取りするのに抵抗がなく、その個人間取引の習慣がそのまま電子マネーに発展しました。
CarePayと呼ばれるモバイルウォレットを利用した医療費の積み立てサービスもあります。
ケニアは国の健康保険への加入率が低く、病気やケガで病院に行っても診療費が払えない人が多い状況でした。
そのため、モバイルウォレットを積み立てをしておき、病院の診察を受けたら、そこから治療費が支払われる仕組みを作りました。
2018年には、世界経済フォーラムによる「社会課題を解決するスタートアップ」(The Technology Pioneers cohort of 2018)のひとつに選ばれました。

近代的制度が未発達であり、中央集権型のシステムが存在せず、インフラも未整備のため、その社会的未熟さが、画期的なアイディアの母体となり、予想外の価値を提供する可能性があります。
これこそが、サードウェーブ・デジタルの強みと言えます。

先進国内部に広がる相対的貧困

アフリカの貧困を見てきましたが、日本のような先進国にも貧困があります。
もちろん、国際貧困ラインの1日1.9ドル未満で生活を強いられている人はほとんどいないかもしれません。
しかし、先進国では物価が高く、人間関係は希薄で、生活のインフラ依存度は高くなります。
そのため、ある程度の収入がないと「健康的で文化的な人間らしい生活」を維持することは難しいです。
こうした先進国の内部にある貧困を「相対的貧困」と呼びます。
いわゆる格差の問題です。

「相対的貧困」の定義は、全世帯の所得の中央値の半分以下とされています。
日本の所得の中央値は、244万円(2015年調査)のため、その半分の年収122万円以下が相対的貧困となります。
日本での相対的貧困の割合は15.7%(約6人に1人)、OECD加盟国の平均は11.8%で、日本は相対的貧困の割合が高いと言えます。

OECDとは、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development)のことで、世界経済に貢献し、世界貿易の拡大に寄与することを目的としています。

ギグ・エコノミーとフリーランス型の貧困

相対的貧困の要因として、「ギグ・エコノミー」(インターネットを通じた単発・短期の仕事)による貧困があります。
個人事業主として仕事をしているため、自分のペースで仕事ができますが、反面、福利厚生・保険・有給休暇がないといった問題が指摘されます。
従来のフリーランスは、そのリスクの代償に高給を得るチャンスがありましたが、ギグ・エコノミーでは透明性と流動性が高いオンライン市場によって、労働単価は低く抑えられます。
また、だれでも簡単な登録で始められ、依頼される仕事も単純な作業が多いため、ギグ・エコノミーは「誰でも簡単にできる安価で保障のないフリーランス業」です。
業務経験が蓄積されない単発的な働き方は、貧困と隣り合わせと考えられます。

シングルマザー・高齢者・子どもの貧困

先進国の貧困は複雑です。
社会的弱者であると考えられる「シングルマザー」「高齢者」「子ども」は、単に生活に困窮するだけではなく、貧困によって人生の選択肢が限定されてしまいます。

シングルマザーの貧困
日本の場合、親が就業しているひとり親世帯の相対的貧困率は、54.6%で、シングルマザーの半数以上が貧困層となっています。
格差社会のアメリカは35.8%であるので、いかに日本のシングルマザーが過酷な状況に置かれているかがわかります。

シングルマザーの貧困の背景は、母子世帯で就業している81.8%のうち、48.8%がパートや派遣社員といった非正規雇用になっています。
妊娠・出産後の女性の雇用機会が限られていることが問題視されていますが、シングルマザーは雇用機会の制約で貧困に陥りやすくなっていると言えます。

高齢者の貧困
2015年時点で、66歳以上の日本の貧困率は19.6%で、日本の生活保護受給世帯のうち47.7%が高齢者で占められています。
高齢者が貧困層に転落すると、自力での脱出は難しく、未来への可能性も閉ざされた立場になってしまいます。

高齢者層の貧困は、アメリカン・デジタル型の社会で、少子高齢化が進むと浮上してきます。
外国製のプラットフォームに依存するデジタル社会では、それに適応できなくなった高齢者に貧困のしわよせがきてしまいます。

子どもの貧困
2015年時点で、日本の子供の貧困は、13.9%で、17歳以下の子どもの7人に1人が経済的に困窮した状態にあります。
貧困により、子ども本人に劣等感が植え付けられたり、教育の機会が奪われることがあります。
そのことにより、世代を超えて貧困が継続してしまう可能性が高くなります。

まとめ

貧困には、教育、健康、住環境などの様々な意味での貧困があります。

アフリカの貧困では、西欧諸国の植民地や豊富な資源、急激な成長などが原因に挙げられます。
民主化が根付くかどうか、新しいテクノロジーが発展するかなど、アフリカだからこそ、望まれることもあります。

日本での貧困は、相対的貧困で、格差が問題になっています。
単発の仕事を行うフリーランスや、シングルマザー・高齢者・子どもなどに、相対的貧困が見られます。

社会的なシステムなどで、貧困が改善されることが望まれますね。

次回は、「教育について」を記事にしようと思います!

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